話し方とか、仕草とか。僕は最初、とても可愛いなって思ったよ。花が咲いたようにきらきら笑う君が、とても愛しくて。

 でも、その明るさがどこからくるのかは全然知らなかった。そして知ろうともしなかった。



 暑さの残る夏の終わり。

 君は季節外れの春風のように、僕の心を融かしていったんだ。



 2.When in Rome,do as the Romans do.





 の荷物を上げ終え、シリウスは自分の前の座席を薦めた。会釈しては腰を下ろし、カレッジもまた、主の隣の席に丸くなった。

 窓の外は緑色。草原だろうか。否、畑だろうか。

 シリウスはぐっと身を乗り出し、必要もないのに声を潜めた。

「で、さっきの続きだけど」

「どうぞ」

「お前が今年入学するっていう・・・ホグワーツの後継者か?」

「そういう君はブラック家の御曹司だね?」

 互いに顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。

 傍らでカレッジが呆れたように欠伸をする。そしての膝に飛び乗った。

「まったくお前らは・・・探り合うことでもないだろうに」

「確かにね。

正解だよ、シリウス。僕は・ホグワーツ。さっきはごめんね。使い魔が居るとはいえ、まだ人ごみには慣れてないんだ」



 苦笑いを浮かべ、は言った。

 シリウスは少し気まずい思いを感じ、座席に体を預けた。ふかふかの椅子が沈み込む。

「ああ、ごめんな。余りにも突然で驚いてさ。

でもお前、学校に行ったらいろんなやつに付き纏われるぞ、当分の間」

「うん、そうなんだよね。だから早く慣れなきゃとは思うんだけど・・・」



 突然カレッジが耳を立てた。ピアスに付いているダイアモンドが軽く揺れる。

 同時に、ドアが開いた。

 金髪に琥珀色の瞳の小さな可愛らしい少女と、赤毛で緑の瞳をした聡明な感じの綺麗な少女が顔を覗かせる。

 金髪の少女はくりっとした瞳で、二人に尋ねた。

「ここ、入ってもいい?」

 見ると二人はスーツケースを手にしていて、未だ席を見つけていないようだった。

 はシリウスに目を遣る。

「シリウス、いいだろう?」

 聞かれた彼は、目を瞬いて勢いよく立ち上がった。

!?」

「はにょ? あ、シリウスー、お久し振りー」

 金髪の少女はニコニコして手を振った。

 対するシリウスはニコニコなどしていられない。

「何でお前がここに・・・!?」

 驚愕の表情に、と呼ばれた少女は怯むことなく笑い続けた。

「あたしも魔女だもーん。

ねぇ、入ってもいい?」

 少女はウインクして言った後、席を指差して小さく首を傾げた。

「あ、ああ・・・。、俺の隣来いよ」

「うん。カレッジ、こっちにおいで」

 黒猫はの肩に飛び乗った。

 女の子二人は重そうな荷物を抱え、中に入る。

 シリウスが手を貸し、荷物を上に上げ終えたところで、ようやく二人は落ち着いて腰を下ろした。



「お邪魔してごめんねー。他どこも空いてなくって。余ってた所がシリウスの所で、ホントに良かったよ」

 金髪の少女は相変わらずニコニコしながら話し出した。ゆるいウェーブのかかった髪が、汽車の揺れに合わせてふわりと揺れる。

「来るのが遅いんだよ。お前のことだから柵の前でポーっとしてたんだろ?」

「シリウス、知り合い?」

 彼女をからかいながら笑うシリウス。その袖を、は軽く引いた。今更ながら気付いたシリウスは、少女を示した。

「ああ。幼馴染」

だよ。で、こっちは駅でお友達になったリリー」

「リリー・エバンスよ。貴方たちの名前は?」

 赤毛の少女、リリーが尋ねた。

 シリウスとは順番を決めるかのように無言で顔を見合わせた。

「俺はシリウス・ブラック。新入生だ」

「この黒猫は僕の使い魔のカレッジ。で、僕は・ホグワーツだよ。どうぞよろしく」

 はそれを聞いて、興奮して立ち上がる。リリーは首を傾げる。

 二人はほぼ同時に口を開いた。

「ホグワーツ? あなたがホグワーツの後継者なのね!? 暴れ柳を引き取ってくれて、ありがとう!」

「ホグワーツ? 学校と同じ苗字なの? 珍しいわよね、それって」

 は苦笑した。座るよう、に手で促す。汽車の揺れが激しくなってきた。

「君がさんだね? よく分かんないけど、父さんが暴れ柳をありがとうって言ってたよ」

「「暴れ柳?」」

 シリウスとリリーがそろえて口を開く。

 着けば分かるさ、とは笑った。



「ところでホグワーツって? 私、手紙が来るまで何も知らなくて・・・教えてくれない? あと、マグ・・・何とかってやつ」

 リリーが肩を竦めた。

 シリウスは軽く眉を上げた。

、リリーはマグル出身か?」

 が頷いた。ほーと言い、関心を示すシリウス。

「マグルっていうのは、魔法を使えない人達の事を指すんだ。リリー、君のご両親や兄弟姉妹、あと、親戚とかご先祖様に魔法使いは居る?」

 が尋ねると。リリーは少し考え、やがて首を横に振った。

「いいえ、居ないわ」

「じゃあ君は生粋のマグル家系か。なるほどね・・・」

「逆に魔法族の人は何て言うの?」

 興味深そうにリリーは聞いた。

「魔法族は魔法族。そのままだよ。あえて分けるとすれば・・・純血、混血、あとはスクイブかな?

純血っていうのは、純粋に魔法使いの血を継いでいる人。祖先もずっと魔法使いの人達のことだよ。シリウスとの家は、純血の名門貴族」

 アーモンド形の目を真ん丸に見開き、リリーは絶句した。

 この際、シリウスは置いておこう。

「にゃ?」だの、「はにょ?」だの言っているこのが、実は名家のお嬢様!

 きっと今日一番の驚きはコレだ。

「で、混血。これが一番多いんだ。魔法族の血と、マグルの血を継いでいる人の事。僕は混血だね。

リリーが魔法族と結婚して子どもを生んだらその子は混血だよ」

「理解できたわ。スクイブは?」

「これはマグル生まれと正反対の人の事。つまり、魔法族の家系から出た、魔力を持たない人の事。分かる?」

 リリーは難しそうに眉を顰めた。しかし、すぐに頷く。

「分かったわ。貴方って、説明上手いのね」

「ありがとう」

 は優しく笑った。



「じゃあ、ホグワーツって? あ、学校と名前と、両方教えてくれない?」

 手櫛で髪を梳きながら、は答える。

「ホグワーツ魔法魔術学校。

千年くらい前にね、四人の魔法使いと魔女が協力してこの学校を創ったんだって。

で、えーと・・・なんだっけ?」

 振られたシリウスは、溜め息をついて説明した。

「ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリン。

四人の名前から、寮の名は決められてるんだ。

創設当時、魔法族はマグルから迫害を受けてたんだと。

で、四人は自分達の子孫とは別に、命がけで学校を守る存在が必要だと考えた。

道端に偶然捨てられてた魔法族の子供に、自分達の力と血を分けたって話だ。

合ってるよな? ?」

 リリーの切れる頭が、さすがにぷすぷすと音を立て始めた。

 大丈夫?と笑いながら、はシリウスに頷いた。

「そうそう! シリウスはやっぱり説明上手よね!」

「阿呆、お前が分かってねぇだけだろうが」

 えへへ、と笑ってはリリーの方を向いた。

「勇気のグリフィンドール、忍耐のハッフルパフ、機知のレイブンクロー、狡猾なスリザリン。

生徒達はね、四つの寮に振り分けられるのよ! リリーはレイブンクローかな? 頭良さそうだもん」

 ね? と、は言った。

「そうかもな。俺は多分っつーか間違いなくスリザリンだ。俺緑色似合うかな・・・」

「君が考えるのはそこなのかい?」

 が笑って突っ込んだ。

「入る寮はもう皆決まってるの?」

 リリーに問われ、は首を振る。

「ううん。皆大体ここかなーって喋ってるだけだよ。本当は帽子さんに決めてもらうんだって! 喋る帽子だよ! ちょっとトキメクよね!」

「どこにどうトキメキを感じるのかよく分からないんだけど、とりあえずそうなのね?」



 リリーの呆れたような言い方に、シリウスとは笑い出した。の膝の上のカレッジまで、プルプル震えている。

 シリウスは豪快に。は本当に綺麗に。二人は対照的だったが、とても親しみやすいという点では変わらない、とリリーは思った。

 つられてが笑い出し、四人の居るコンパートメントは結構うるさかった。


 シリウスの笑いが収まりかけた頃、再びドアが開く。

 くしゃくしゃの黒髪にメガネを掛けた男の子が、スーツケースもろとも勢いよく中に飛び込んできて、同じように勢いよくドアをしめる。

 彼は長く息を吐いた。



「あー、しつこいなぁ、もう・・・。

突然ごめんね。今ある人から逃げてるんだけど、ここに一緒に入れてもらってもいいかな?

あ、そうそう。僕はジェームズ・ポッター。新入生だよ。よろしく」



 ジェームズは爽やかで人懐こい笑みを浮かべ、首を傾けた。





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